入試問題の変化について

最近の理科の入試問題を見ていると


「見たことの無いテーマを出題(大体が大学受験の範囲)」→「その代わり、リード文で一通り説明するからその場で理解してね」


この流れが加速しているように思います。

先日、森上研究所主催の入試分析会へ行ったのですが、その中で「理科はもうなんでも有りの時代になった」とおっしゃっていましたし、実際その通りだと思います。

以前は上位校だけに見られたのですが、最近は中堅レベルの学校であってもこのような形が多いです。

ただし、中堅校の場合、リード文の誘導がわかりやすかったり、設問が易しくなっていたりします。


上位校でその傾向にあるのは確かにわかります。

習ったことのあるようなテーマを出題しても差がつかないからです。


この形式にすると受験生の思考力、読解力、理科的なセンスを計ることができます。

麻布とか武蔵はこの辺の作りが上手いです。

渋谷系はテーマが面白く、入試問題も良く考えられて作られているのですが、どちらかと言えば読むスピードや読解力の方が重視されます。理科の力を計りたいのでしたら個人的にはもう少し問題文を簡潔に作れば良いのになと思います。


さて、このような入試問題が主流になると、頑張ったことがあまり得点に反映されない傾向になります。

範囲の決まっているテストや模試等ではそれなりに得点が取れるものの、入試問題になるとイマイチ取れないという受験生はこれからよりキツくなってきそうです。

物量作戦でガンガンやらせるようなタイプの塾は、方向性を少し変えないといけないかもしれません。

模試の傾向が今までと変わらなければ、偏差値だけは高く出るので受験までの安心感は得られるでしょうが、それが結果とリンクしなくなってくる可能性もありますね。

アントレ生の場合はまず予習をするスタイルですから、「知らないテーマについて文章・図・表・グラフなどを読んで自分なりに理解する」というのを日頃からやっているため、有利になるかもしれません。(あまり関係ないかもしれませんが)

他塾生でも事前に学習するテーマを読んで、自分なりに落とし込んでおく作業は必要になるかもしれませんね。



このような傾向が進んでいる理由としては、「知識偏重の指導を思考力重視の指導に変えよう」という改革の流れがあるからなのは間違いなさそうです。

学校が変化している様子を見せなければ何も対策していないように思われてしまうため、学校側はまず入試問題に変化をつけることで、外向けにアピールしなければいけません。

作問する学校の先生達も大変だと思います。


しかし、あまりにも思考力思考力と言うせいで、全教科でその傾向が見られているように思います。

今年の開成の国語大問2がまさしくといった感じですね。

残念ながら著作権の関係で公開しているところは少ないのですが、頑張って調べれば出てくると思います。

「短い本文と、表、グラフを読み解く」問題で、経済学がテーマでした。(機会損失の話です)

問題自体はすごく面白いのですが、正直「これを国語でやるのか…」と思いました。(設問自体はある程度国語の力を聞いてはいるのですが)


また、テーマだけでなく、設問に関しても少しずつ変化をしてきています。

首都圏模試の「思考コード」というのはご存知でしょうか?

軽く説明しますと

A 知識・理解
B 応用・論理
C 批判・創造

1 単純
2 複雑
3 変容

これらの3つずつの要素を3×3の表にして入試問題の設問を9つに分類したものです。

テーマは…なんでも良いですけれども例えば「プランクトン」にしていくつか例を挙げますね。

A1
(画像を見せて)このプランクトンの名前を記号で答えなさい。

A2
(画像を見せて)この中から植物プランクトンの性質を持つものを全て選び、記号で答えなさい。

B2
(表・グラフなどのデータを見せて)このプランクトンはこの湖にどのような影響を及ぼしているかを書きなさい。

C3
(表・グラフなどのデータを見せて)現在、この湖の生態系は崩れようとしています。この湖の生態系を維持するために、もし新たなプランクトンを1つ生み出せるとしたら、どのような能力を持ったプランクトンを生み出しますか。根拠とともに、君の考えを書きなさい。


こんな感じです。

C要素を聞いてくる学校は今のところかなり少ないです。これからもそう多くなるとは思えません。ただし、A要素が少なくなる代わりにB要素の問題が多く出題されることが予想されます。


さて、ここからが本題なのですが、思考力を問われるB要素の対策をどのようにするかです。

例えば理科には「電気」「天体」「化学計算」「力学」等、受験生が中々理解しづらい単元があります。

できる生徒は1回目や2回目で大体の原理はつかみますので、6年生の最後までかかることはありませんが、多くの生徒は何度も繰り返し、ようやく6年の夏頃に基本を身につけることができるわけです。(最後まで曖昧な生徒もおりますが)

塾によっては受験カリキュラム終了が6年夏までかかり、繰り返し作業と過去問対策を残り半年でやる所もあります。(以前はそれが主流でした)

そうなると一体いつB要素のトレーニングをすれば良いのでしょうか。4年、5年生時にやることは可能でしょうか。


受験生の保護者様によく知っておいていただきたいのは何かをやるということは何かをやらないということです。

何かをやるということを足し算で考える方がいらっしゃいますが、集中して勉強できる時間の総量はその子によって決まっています。

そうなると、思考力を育てるトレーニングをするということは、その分知識を身につけるトレーニングをしないということになります。


ここで問題になってくるのは、ある程度知識を身につけるトレーニングをしないと模試で良い偏差値が出ないことです。

通常、大手塾ですと偏差値が低いとクラスを落とされます。下手をすると設置されている志望校クラスに入れないこともあります。

そうなると、偏差値を出すために、知識を身につけるトレーニングはやはり必要になります。

つまり、思考力を育てるトレーニングをする時間の確保ができるのは、知識を身につけることが初めから上手な子に限定されやすいのです。



実際に現場を見ているとA要素の問題とB要素の問題の両方にしっかり対応できる生徒はかなり少ないことがわかります。(どのレベルまで要求するかにもよりますが…)

例えば思考力のある生徒はルーチンワークを嫌がる傾向にありますし、逆にコツコツとルーチンワークをこなせる生徒は思考力がイマイチなことが多いです。

そうなると、それぞれのタイプの生徒が不足している側の力を育てていかないとバランスが取れないわけですが、苦手な方を伸ばすのはかなり大変というのが現状です。

ルーチンワークを嫌がる子供に「コツコツやりなさい」と言って素直にやるようなら、我が子の言行不一致に頭を抱える多くのお母様達がこの世に存在するはずがありませんし、だからといって無理矢理イスに縛り付けてやらせるのもどうかと思います。

このタイプの生徒は授業中の反応はすごい良いので、流れにそってヒントを与えながら問いかけられると的確に答えられますが、テストとなると得点が取れません。

反対に、地道にコツコツ覚えることが得意な生徒は、知らないものが出てきた時に考えるのをやめてしまう傾向があります。

授業中に問いかけても「多分こうじゃないかな…?」という風に考えて答えることはほとんどなく、誰かが答えを言ってくれるのを待ちます。そして、正しい答えだけを書き、家で復習して自分のものにしていきます。

このタイプの生徒は範囲の決まったテストでは高得点を出しますが、記述が多めであったり、実力テストのようなものだと得点が落ちます。また、算数が全般的に苦手だったり、原理の理解を要求される理科の単元が苦手なことも多いです。

苦手な面でもある程度伸ばすことは可能なのですが、あまりそれをやりすぎるとその生徒の得意な所を潰すことにもなったり、受験勉強自体が苦痛なものになってしまうため、やはり限度というものはあります。



長くなったのでまとめます。

体力も時間も限られている小学生に、大人は多くを求めすぎではないかと思います。

それでもできる子達はいいです。早めに各単元のポイントをつかみ、あとは上位校の過去問を解いているだけでそれなりに思考力のトレーニングができます。

けれどもそうでない子達は、足りない偏差値を少しでも上げるために大変な思いをしてようやく身につけた知識がほとんど出題されず、本番では思考力という指標で計られてしまうわけです。

ほとんど勉強しなかったけれども元々思考力があった生徒に本番で負けてしまい、頑張ったことが報われたという自己肯定感も得ないままに入試が終わります。

ですから中堅以下の学校も色々と入試問題に手を加えてはおりますが、できれば努力してきたことが評価されるような部分はある程度残して欲しいなと思います。

入試問題は色々と変化していきますが、アントレの良さを残しつつも、変化にはしっかり対応できるように頑張っていきたいと思います。



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No title

>>??? さん
富士見の入試問題は少しずつ変化をしていて、数年前から理科も問題文が長くなってきており、社会も難易度は高いです。

富士見を志望する生徒のレベルを考えると先生がおっしゃる「標準問題」のレベルを最後まで曖昧にしたまま入試に突入することが多いので(それでも合格できるのですが)、どうしても直前までそこに注力する必要があり、思考系の対策を別途時間をとって行うことは中々難しいのが現状です。

やはりここ数年の過去問で対策していくしかなさそうですね。コツコツやれる生徒は過去問対策もきっちりやれる傾向にありますから、決して不利ではありませんよ。安心して下さいね!

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No title

>>??? さん(15:19)
あまり合格者数とか合格率とかを必要以上に気にする塾ではありませんので、そんなことを言わないで下さい(涙

もちろん塾全体の結果は良いに越したことはありませんが、本人やご家庭の希望通りの受験をすることの方がよっぽど大切だと思っております。

No title

>>??? さん(23:34)
返信が遅くなって申し訳ありません。
先日は面談ありがとうございました。(マスクもありがとうございます!)

そうなんです。私学の上位校は特に慌てて何かをする必要はないわけで、どっしり構えていて欲しいです笑

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カッシー

Author:カッシー
首都圏の中学受験専門塾で教室長をやっております。
中学受験情報、塾内での出来事、雑談等を記事にしていきます。
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